五月晴れのファンブルグ。
心地よい春風が木々の間を通り過ぎてゆく。
(春ですねぇ・・・)
最後の洗濯物を干し終えた斎(いつき)は、空を見上げた。
真っ青な空が抜けるように高い。先日までのどんよりとした空が嘘みたいに思える。
「今日はいい日になりそうです」
晴れやかな気分でそう呟いた。
ほんの数刻のちに最悪に転ずるとは知るよしもなかった。
部屋に戻って洗濯道具を片付けると、お茶を淹れるために竃にケトルを乗せた。
(もうそろそろお姉さまも帰ってくる時分ですね)
「ふぁ~~~」
椅子に腰掛けて雑誌を眺めていたマミコがあくびをした。
先日の騒ぎで、棲み処に帰る道が再び使えるようになったのに、まだファンブルグに・・・というよりヒヨコ神社に居ついてしまっている。
(働かざるもの食うべからず)という慧さまのモットーで、失せ物探しや古物の鑑定をやってはいるものの、Grが低いため正直あまり役に立ってはいないようだが・・・。
左之助は、相変わらず無言で斧の手入れに余念がない。刃こぼれはもちろん、焼きが入ったりしていないか入念に確認している。もっとも、愛用の戦斧を使うような荒事はしばらく起こっていないのだけど・・・。
「お茶がはいりましたよ・・・」
「うわぁい、ありがとうございますぅ」
「・・・かたじけない」
湯飲みを渡して、自分もテーブルについて、ホッとため息をついたときだった・・・。
ダダダッ
ドン!バタン!
「決闘よっ!」部屋に飛び込んできた慧さまが言った。
「え~と・・・」
ほわほわした幸せ気分から戻りきれない斎。
「結婚ですかぁ?」ボケるマミコ。
「?」首をかしげる左之助。
「なに、ぼさっとしてるのよ!うちらの存在を賭けた闘いよ!用意しなさい!」
慧さまはいらだたしげに、急かす。
「お、お姉さま・・・、いったい誰と決闘なさるんですか?」
斎がようやく尋ねると、慧さまは応えた。
「決まってるでしょ!あの銀髪ジャージ眼鏡がやっている・・・」
「『王立飛び研究所』とかいう組織よ!」
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