「この先よ」
慧さまは、廊下を曲がって住居と神殿を繋ぐ渡り廊下に立った。
「コノ先ニオレノヨメガ・・・」
「そう、その先の襖を開けたところが本殿よ」
「ヨ、ヨシ・・・オマエハソコニイロッ!少シデモ動イタラ撃ツ!」
「ハイハイ・・・大人しく待ってるわ」
慧さまは両手を挙げ、短筒を構えて後ずさりする巨大ヒヨコに声をかけた。
「あっ、そうそう・・・走りたいかもしれないけど渡り廊下は走っちゃダメだから」
「ソウ言エバ、逆ニオレガ走ッテ渡ルト思ッタカ?」
「へっ?なんのことかしら・・・?」
「フフフ、オマエノ企ミニ気ヅカナイトオモッタカ?」
「失礼ねぇ・・・、企みなんてないわよッ」
「オレハ歴戦ノえーじぇんとナノダ。キサマノヨウナ腹黒ソウナ奴ヲ相手ニスルノハ初メテデハナイ・・・」
巨大ヒヨコは後ろの渡り廊下を振り返ると、
「ドウセ落トシ穴デモ仕掛ケテアルノダロウ?ソノヨウナ古イ手ニハ乗ラヌ」
そう言うとバサバサと羽ばたきをして、
「仰セノ通リ走ッテハ渡ラナイ」
そのまま浮上すると
「一飛ビニ渡ルノダ!」
「あーーっ、きたないっ!!」
「ハーッハッハッ」
渡り廊下を支える柱の間を哄笑しながら滑空する黄色いヒヨコ。
ちょうど中ほどに差し掛かったところで、プチっと何かが切れる音がした。
「アッ・・・」
ガラガラガラ、ドシーン
大音声とともにヒヨコの頭上に骨付き肉が満載されたタライが落下した。
「あ~あ、だから言ったのに・・・」
天井から透明な糸が揺れている。
その下に、骨付き肉に埋もれた巨大ヒヨコが渦巻き目をして伸びていた。
「落語忍法『目覚しの術』・・・・・・なんちゃって」
どこから取り出したか、荒縄を手にニッコリ笑う慧さまであった。
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