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【2024/04/28 12:58 】 |
星に願いを・・・その壱
「来週の日曜日の夜、ファーレンの上空で100年に一度の大流星群が観測できるであろう」

王立天文台の唐突な発表に街中が驚き、そして沸き立った。

その日は奇しくもファンブルグ城下町で四半期ごとに開催されるフェスティバルの日・・・。
「今回のフェスティバルは星祭りだ!」
東地区の商人たちを中心に、ファンブルグの城下町は星祭にいまだかつてないほど盛り上がっていた。


☆★★


街中に流れ星をかたどった装飾があふれている。
看板や飾り物はもちろんだが、街を行き交う人々の服や装備の至る所に星、星、星。
アクセサリーも、星型のものが人気を集めている。

そんな日の落ちた東地区を歩く3つの影。

「本当にどこもかしこも星だらけねぇ」
商店の軒先に飾られた流星の吹き流しを指で弾いたのは、知る人ぞ知るヒヨコ神社のリーダー慧さま。
三つ編みを左右に垂らした風貌はローティーンにしか見えないが、身の軽さと器用さを極限まで高めたシーフである。
残念ながらその器用さは日常生活には活かされていないようだが・・・。

「あっ、お姉さま、ピカピカ光ってきれいですよ」
その横をキョロキョロ眺めながらピョコピョコついてくるのが、クレリックの斎(いつき)。
そのほわほわした印象からは想像し難いが、回復呪文と攻撃呪文の遣い手だ。

「はいはい、・・・それにしても盛大に電気の無駄遣いじゃないの、これっ・・・」
斎の指差す方向の電飾を眺めて呟く慧さまに、

「・・・まあ、そういうな、慧さま。人が星を敬うのは古来から世界各地に伝わる風習のようだ。特に昔は流れ星は凶兆でもあったともいう。多少派手なくらいでいいではないか」
後ろからついてきていた長身の男が諌めた。
腰には大刀を差し懐手で歩いている左之助は剣士というよりは侍と呼ぶのがふさわしい風貌だ。
腰に差した刀以外でも、槍、斧、小太刀なんでもござれの近接戦のプロフェッショナルだ。

「あっ、あそこに星形をしたキャンディが~」
斎がスイーツを満載したワゴンに駆け寄っていった。斎を護るボディガードのように左之助も後に従う。

「まぁ、平和でいいんだけどね」
慧さまはそんな二人を見て笑みを浮かべた。

その時、夜空をツーッと流れ星がひとつ横切った。
灯りが煌々と輝く街中でもはっきりとそれとわかる相当な明るさを持った星だった。

「あっ、流れ星だっ!」
空を見上げた人々から歓声が上がる。それと同時に、
「色白、髪黒、髪長ッ!」
「金星(かねぼし)、金星、金星・・・」
空を見上げ早口で願いを唱える声があちらこちらから聞こえてくる。

「流星が降るたび生命が生まれる・・・」

「えっ?」
怪訝な顔で振り返る慧さま。
しかし、そこには誰の姿もなかった。

(流れ星は凶兆であった・・・)
左之助の言葉が引っかかる。

「んーー、面倒なことが起こんなきゃいいけどね・・・」
慧さまは夜空を見つめて呟いた。





同時刻、王立天文台。

「おいッ、見たか?」
「何?」
「今の流れ星から、小さな星が分かれただろッ?最初にひとつ・・・そのあとにもうひとつ・・・」
「うんにゃ、見てないが・・・、なぁ、お前は気づいたか?」
「いえっ!、自分は気づきませんでしたッ!」
「だろっ? 気のせいだよ、気、の、せ、い・・・」
「そうかなぁ・・・」
「仮にそうだとしても、小さな隕石クラスだろう?ここに届く前に焼き尽くされるさ、心配ないって!」
「うーん・・・」

同僚たちが去った後も、ひとり男は首をかしげていた。


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【2012/05/09 19:44 】 | メインストーリー | 有り難いご意見(0)
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