１

それは、冬晴れのある日のことでした。

いつものように、にゃんこさんたちがお見舞いに行って、これまたいつものように、大騒ぎになって、フュンフさんにジュースがかかってしまいました。

「よごれちゃった･･･」
と、べそをかくフュンフさんに、サータルスさんは優しく、

「シャワーを浴びておいで、その間に服は洗っておこう･･･、アイン、手伝ってやってくれ」
と、言いました。

「わかったにゃ」
アインさんは、フュンフさんの手を引っ張って、シャワールームに向かい、サータルスさんは汚れ物を抱えて洗面所へと向かいました。

しばらくすると、シャワーの音がやんで、

「たるにゃ、そこにいるにゃ？」

「おう」
サータルスさんが答えると、

「悪いけど、フュンフの体拭いて欲しいにゃ･･･ねこも汚れちゃたっから、ついでにシャワー浴びちゃうにゃ」

「ああ、いいぞ」
サータルスさんが、ドアが開いて出てきたフュンフさんを受け止めたときに、中にいたアインさんと目が合いました。

後ろ向きで首だけを回してこっち向いたアインさんを見たときに、サータルスさんはなぜか胸がドキンとなりました。

「ん、なにかにゃ？」

「あ･･･、い、いや･･･なんでもない」
サータルスさんが、ぶっきらぼうに言うと、

「だったら、寒いから、ドア閉めてほしいにゃ」

「あ、ああ･･･、そうだな、悪い悪い」
ドアを閉めようとするサータルスさんに、アインさんは目を細めて、にゃっと笑うと

「それとも、たるにゃも一緒に入るにゃ？」

「バ、バカなこと言うな･･･！大人をからかうもんじゃないっ！」
赤くなった顔を振って、ムキになって否定するサータルスさんなのでした。





（うふふふ･･･）

（うんうん、いい感じです･･･）

★

２

それから数日後のことです。

サータルスさんが、散歩の途中でヒヨコ神社に立ち寄りました。

玄関の横で、左之助さんが居合いの型を練習されていました。
刺し子の稽古着に袴姿で、真剣を使った本格的なものです。

「やあ、左之助の旦那、久しぶり」

「おお、サータルス、その後、身体の具合はどうだ？」

「ああ、おかげさまで快方に向かっているよ」

「そうか、それは重畳重畳」

話をしている間も、左之助さんは刀を振り続けています。

いつもなら、そのまま中に入ってしまうサータルスさんですが、足を留めて素振りを続ける左之助さんを見ています。

「ん、どうかしたか？」
視線に気づいた左之助さんがいぶかしげに尋ねると、サータルスさんは、

「あ、いや、なんでもないんだ･･･」
と言ってドアのノブに手をかけましたが、意を決したように振り返ると

「左之助っ、わ、私も、け、剣の修行をしてみたい･･･私に伝授してくれないかっ！」
なぜか声が上ずっています。

「おおっ、そうか･･･、歓迎するぞ、サータルス！な～に、心配することはない。私が手取り足取り教えてしんぜよう。」
左之助さんが、嬉しそうに笑顔で言うと、サータルスさんは俯いたまま、

「あ、ありがとう･･･よ、よろしく頼む･･･」
そういうと振り向かずにドアの中に消えました。





（クスクスクス･･･）

（どうです？）



★

ごつん！

ごつん！

「ふみゃあ、痛いですぅ～～」

「お、お姉さまっ、何をなさるんですかっ」

涙目になって見上げる二人に慧さまは言った。


「何をじゃないわよっ、あんたたちっ、サータルスをネタにヤオイ小説書くの、やめさないっ！！」

[2回]