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【2024/04/27 06:46 】 |
ep.13 みんなのうた -激闘の詩-

12月23日22時20分 迷宮内空洞

(さすがに空飛ぶ相手に剣じゃ辛いか・・・)
空中に浮かんだ野分を見ながら、エクサリアは考えていた。

飛行系の敵には、弓やブーメラン等の飛び道具が鉄則。
逆に近接系武器は-槍を除けば-圧倒的に不利である。
間合いに入るのが困難だからだ。
まして、相手は高速移動を得意とする野分(メガエラ)である。


改めて周囲を見渡す。

天然の洞窟の内部。
縦に長い長方形の部屋は、中で球技ができそうな広さはある。
天井までの高さはおよそ10m。
自分の背後、迷宮深部に連なる通路は左に折れ、その手前に気を失ったツヴァイとドライが倒れている。

(とりあえず、二人を人質にされるのはまずいわね)

野分を後ろに行かせないよう、剣を構えてダッシュした。






 

 


 

「遅いですわ」
野分は剣を振り回すエクサリアをあざ笑うかのように、一度飛翔すると、やおら空中で反転し、かぎ爪で襲い掛かる。

エクサリアも態勢を直し、迎撃するように剣を振るう。
(もう少し、もう少し・・・)

野分を倒すためには、自分の間合いに入った一瞬が勝負。
移動する物体は急に反転しようとしても慣性の法則で制御不能の空白ができる。
まして、野分は高速で落下してくるのだから、いくら化け物であってもコンマ数秒のタイムラグは出来るはず。
剣で仕留めるためにはそのポイントしかない・・・。
そうエクサリアは考えていた。

なので、わざと大振りし隙を見せた。

(ほらっ、来なさい!)
天井に届くかと思われる高い位置から高速で降下してくる野分。

(そうよ、そのままのスピードで突っ込んで来なさい・・・)
野分の爪が迫ってくる。

鋭い爪を紙一重でよけ、

(ここだっ!)

「迅速果断!」

しかし・・・、エクサリアの剣は、空を切った。

「えっ?」

「あなたが、わざと隙を見せて、なにかしようとしていたのはわかっていました」
剣先のほんのわずか先。空中にホバリングするかのように停止している野分。

「音速で移動しようとも、その場で停止するくらいは造作のないこと」

「くっ」

野分はエクサリアの頭をくるっと飛び越えると、両肩をがきっと掴んで持ち上げた。

「は、放しなさい」
そのまま、猛スピードで壁に向かい、ぎりぎりのところで反転する。
エクサリアの身体は、そのままの勢いで壁に激突する。

「ぐわっ」

「まだまだいきますわよ」

反対側の壁に向かい、またも反転する。

「うぐっ」
その衝撃で懐に入れていた瓶のいくつかが割れたようだ。

「今度は、フリーフォールですわ」
上昇しようとする野分。10mの高さから落とされたら、ただじゃすまない・・・。

とっさに、手にした剣を肩を掴んだ爪に突き立てた。

「うぎゃっ」
さすがにひるんだ野分が掴んでいた肩を解放する。

そのまま落下して、転がった。

壁にぶつかった衝撃と掴まれた肩の傷のせいで、まともに剣が握れない。
ヒールを唱えたが、握力までは回復しないようだ。

(まいったわね・・・)

万策尽きたエクサリアは、それでも膝をついたまま野分を睨みつけていた。



その頃。

この洞窟、街に戻る近道だって思っていたら、いつのまにか迷ってしまったみたい。

「おねーちゃん?」

「ああ、大丈夫、道になんか迷ってないから、全然大丈夫よ?」

「もう・・・」
妹が何度目かのため息をついた。
本当は、この道でいいかどうかわからないけど、そういっておかないと心配になっちゃうしね。

「お、おねーちゃん、大変!」

「ん?どうしたの?」

「こんなところに・・・」
指差す方を見ると、子どもが二人倒れている。
遠くで、戦闘の音らしきものも聞こえるような気がする。

「その子たちをこっちへ」
子どもを抱きかかえて、もと来た道を戻る。

「おねーちゃん、息はしてるよ」

「よかった・・・じゃあ、治療しましょう」
治療呪文を唱えると、やがて二人は目を覚ました。

「・・・」

「・・・ここは・・・どこにゃ?」

「洞窟の中よ、君たち、倒れていたからここまで連れてきたのよ」

「うんうん、大丈夫ですか?」

「謝」

「おねーしゃんたち、あいあと・・・」

「いえいえ、それはいいんだけど、君たちこれからどうするの?一応、応急手当はしておいたけど、専門家としてはちゃんと病院に行くことをお勧めするわ」

「病院・・・?」
何か考えていたようだが、はっと思い出したらしい。

「ツヴァイ、慧にゃはどっちにいるかわかるかにゃ?」

「諾」
ツヴァイと呼ばれた少年は、あちこち方向を探っていたが、ぴっとある方向を指差した。

「うん」
もう一人が頷いてから、こっちを向いて、

「おねーしゃん、ありがとうごじゃいました」
ぺこりと頭を下げた。そして、たたっと走り去った。

その様子をあっけに取られて見ていたが、

「おねーちゃん、出口、あっちかもしれないね」

「・・・ついて行ってみようか・・・」

「うん・・・」

「待ってーー」

前を行く二人を追いかけた。



場面は、もう一度、エクサリアに戻る。

「そろそろ、私も飽きてきましたわ」
空中で羽ばたきながら野分が言う。

「この辺で、決着をつけさせて頂きましょう」
野分の背後に風が渦巻く。

(来るっ・・・)

エクサリアは無駄とは知りつつも剣をかざした。

その時。

一人の男が戦場に現われた。

「あれ~、なんや、ここは?」

「なんですか、あなたは?」

「ふぇ~。珍しい鳥がおんねんなぁ、しゃべりおったわ」

「失礼ですわね・・・」
まなじりを上げる野分だったが、

「ふっ、この場に来合わせた不幸を呪いなさい・・・バニッシュブロウ!」

「あぶないっ!」
放たれた風の渦が男を巻き込んで、吹き飛ばしたかに見えたが・・・。

「おっと、危ないやんか」
男は、いつの間にか、エクサリアの横にしゃがみこんでいた。

「センセ、こんなことろで、なにしとん?」

「あ、あなた・・・」
黒いマント、ボサボサに伸びた髪、吊り上がり気味なのにどこか愛嬌のある目、背中に背負った巨大な戦斧。そして・・・人を食ったような西部訛り。

「ハイデッカー!!」

「ひさしぶりでんな、センセ・・・」
にかっと笑う。

「あなたこそ、こんなところで、なにを・・・?」

「いや~~、いつものようにハニーを探しとんねんけどな、道に迷ってうろうろしてて、気がついたらここに出てたっちゅうわけや・・・」

「そんなことより、危ないから、早く逃げて・・・」

「危ないって?」

「旧交を温めるのは、黄泉の国でどうぞ・・・」
空中から声がかかった。

「センセ、あの鳥が・・・?」

「・・・前に闘ったマッチョの仲間よ」

「ほなら・・・」
ハイデッカーは立ち上がると野分に向き直った。

「ワイにとっても敵っちゅうこっちゃ・・・」
鋭い爪で襲い掛かるのを、紙一重でかわす。

背中から戦斧を取り出して構えた。

「鳥さん、悪いな、ワイが相手や」



「構いませんわ」
野分は悠然と、

「所詮、どっちが先に逝くかだけのこと・・・」

「気をつけて、スピードは尋常じゃないわ」
先ほど、迅速果断をかわされたことが脳裏をよぎる。

自慢じゃないが、反応速度には気を使って鍛えてきた。
更に、速増グレードで速度を上げた。
それをかわした野分が、ただでさえ重い戦斧を抱え動きの鈍い戦斧闘士に遅れをとるだろうか?
エクサリアは、隙をみて援護すべく体勢を変えようとした。

「センセ、助太刀はいらんで?」
ハイデッカーは後ろも振り返らずに言った。

「!?」

「大丈夫やて・・・」
高速で爪を繰り出す野分の攻撃をかわしながらハイデッカーは親指を立てた。

「ところでな・・・、センセは、斧がこういう馬鹿でかい斧だけやとおもってへんか?」

「なっ!戦闘中よっ・・・」
エクサリアはハイデッカーの緊張感のなさが信じられなかった。

「いくらか身のこなしはできるかもしれませんが、舐めると楽に死ねなくなりますよ?」
野分もかなりイラついているようだ。

二人のそんな様子を知ってか知らずか、ハイデッカーは、

「斧にはいろんな種類があるんや・・・、例えばこんなんも・・・」
腰に巻いたベルトから小ぶりの斧を抜き、無造作に投げた。
斧はブーメランのように弧を描いて飛ぶと、ハイデッカーの手に戻った。

「ほな、いくで?」
同型の斧をもう一本抜いて、両手に構え、野分に向かって投げつけた。

「くっ」
最初の斧をかわした後、2本目の斧が野分の羽を掠めた。
ハイデッカーは、手に戻った斧を再び投げつける。
だんだんそのスピードが上がってきた。

形勢不利と見た野分は、更に高く、天井に近い位置まで上昇した。
そこで、呪文の詠唱を始める。

「なるほど、そこまで上がると、これじゃあ、とどかへんなぁ・・・」
困った、困ったと言うが、真剣に困っている様子ではなさそうだ。

「そいじゃ・・・」
ベルトから別の短い斧を外し、その柄を引っ張るとするすると伸びた。
戦斧の部分が小さく先端が尖っているので、斧と言うより短めの槍のように見える。
その斧を手に、ハイデッカーは宙に飛び上がった。

「まっ、まさかっ!」
驚愕する野分。

「・・・飛龍撃?」

同じ高さまで飛翔したハイデッカーはニコッと笑って、

「当たりや」
斧の先端が、野分の右の羽を貫いた。

「ぎゃぁぁああああ」

落下してきた野分の前にエクサリアが立つ。

「いろいろやってくれたわね・・・」
剣を抜いたエクサリアが、

「迅速果断!」
野分の左羽が落ちた。

「ああああ・・・」
いやいやするように首を振る野分に、ガラス瓶の蓋を外しながら、

「この聖水には、カプサイシン(注:とうがらしの成分)がたっぷり含まれているから、燃えるように熱いと思うの・・・」
凄絶な笑みを浮かべて振りかけた。

「ぐぁぁぁあああああ」
うめき声を上げながら、のたうち回っていたが、やがて動かなくなり、そして白煙を上げて灰と化した

後ろで見ていたハイデッカーは、

「センセ、相変わらずのどエスやんなぁ・・・」

「冗談を言ってる暇はないわ」
倒れているはずのツヴァイとドライを探す。

「ツヴァイ?ドライ?どこ・・・?」

「うーん・・・、ワイが来たときにはおらへんかったなぁ・・・」

「そんな・・・」
呆然とするエクサリア。

「おおっ、しっかりしいや・・・病院連れてくさかい、もうちょっとの辛抱やで?」
しかし差し出された手を振り払って、

「だめっ!そんなことしてる暇はない・・・」

「せやかて、どうみたって重傷やないか・・・どないすんのや?」

「私は、これを・・・」
割れていないガラス瓶を拾い上げて懐に入れると、

「みんなに届けなきゃ・・・」
(あばら2,3本、いっちゃってるかな・・・)

痛むわき腹を押さえ、壁に手をつきながら、迷宮の奥に向かって歩き出した。

一人になったハイデッカーは、う~ん・・・と考えていたが、

「ああ・・・、センセには恩もあるしな・・・」
頭をがしがしと掻くと、

「しゃあないな、もう・・・、センセ、センセ、ちょっと待ちぃな・・・」
と迷宮に消えていったエクサリアを追っていった。







 

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【2010/07/10 00:01 】 | メインストーリー | 有り難いご意見(3) | トラックバック()
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有り難いご意見
うわあああ
ハイデッカかっこいいー!w
この戦闘シーン最高ですよ、こういうコ作りたかった!
まさにイメージ通りなんですが自分で再現できそうもありません(笑
活躍させていただいてありがとうございます!

引き続き楽しみにしております!b
【2010/07/11 00:59】| | アティナ #4d93cb5eb7 [ 編集 ]
Re:うわあああ
ハイデッカーのキャラ、結構、お気に入りです。

第2部はレギュラーになってもらおうかなぁ~と思ってる次第で・・・^^
【2010/07/19 21:06】


こっ、こわw
エクサそれドSやない。鬼や。。。。

ハイデッカのツッコミは当たり前ですw

にしてもハイデッカがかっこよすぎるわ。
そしてまさかのアティナさんとラミティの登場!
このままツヴァイとドライについてくと念願の再開??
迷子にさえならなければwww

【2010/07/11 11:37】| | 樽卿 #56af5bf09d [ 編集 ]
Re:こっ、こわw
今回はシリアスな役が多い中で、アティナさんちの方々には、ほのぼの系を担当していただきました。
ハイデッカーも、ほのぼのと戦ってたでしょ?w

ある意味、新落ち担当・・・かなw
【2010/07/19 21:10】


無題
エクサさん…(´・ω・`;)
でも勝ててよかったです><

ハイデッカさん
会えるといいのですが…><
【2010/07/11 19:39】| | みい #8de7d817f0 [ 編集 ]
Re:無題
ブチ切れたエクサリアは、ちょっと引くくらい怖かったですね^^;

ハイデッカー、合えたかな・・・?
【2010/07/19 21:11】


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