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友へ
あなたがおいていった子どもたちは、私が引き取ります。 いや、文句は言わせないよ! 言いたいことがあるなら、直接聞くからいつでもおいで。 あなたの好きだったお酒用意して待ってるから。 ゆかりこ PR |
これが前回の『ヒヨコ神社』
入り口のドアの横に唖然とした斎(いつき)。 向かって右側の一人掛けのソファの前に、3~4歳の幼児(彗)を抱いた慧さま。 奥の窓辺の椅子に半分腰を浮かせた左之助。 左側の3人掛けのソファには首っ玉に15~16歳の少女をしがみつかせたサータルス。 そして、部屋の真ん中に短筒を構えた身長1m80cmくらいのヒヨコ。 そのヒヨコが「オレノヨメ」を出せと言っている。 「ヒ、ヒ、ヒ、ヒヨコキターーーーーー!!」 斎が万歳するかのように両腕を振り上げた。 宇宙・・・。 それは無限の可能性を秘めた神秘の世界。 若者達は、その扉を開き、「未来の家族」を探す。 その手で、ヨメを掴めっ! ・・・・・・コホン、もとい・・・・・・。 真っ先に我に返った慧さまは、斎と左之助にアイコンタクトした。 「斎っちゃん、『オレノヨメ』あそこにまだあったっけ?」 「えっ?、オ、オレノヨメですか?・・・ど、どうでしたっけ・・・?」 空とぼける斎。 「隠スト為ニナランゾ」 ヒヨコはイライラと足踏みをしている。 「左の字、知ってる?」 「・・・先ほど本殿にお連れしたが・・・」 立ち上がり掛けた腰を下ろして、左之助が答えた。 「あっ、ああ、そうだったわね、本殿、本殿・・・」 さりげなく彗を身体で隠すようにポジションを取る。 「そこのドアを出て左に曲がって渡り廊下渡ったところが神殿なんだけど」 「本当カ?ソコニオレノヨメガ?」 「うんうん、間違いないって!なんなら私が案内するけど?」 巨大ヒヨコはなにやら思案しているようだったが、 「オレヲ騙シタラ」 羽にひっかけた短筒を振り回しながら 「コイツガ黙ッチャイナイゼ」 と低い声で告げた。 「斎っちゃん、私が案内してくるから、この子を・・・ねっ?」 不安そうに見つめる斎に彗を引き渡すと、 「大丈夫、大丈夫、オレノヨメを渡すだけだからすぐ済むわ。何にも心配はないから・・・」 ウインクした表情はいつも慧さまの何か企んでるソレだった。 慧さまは巨大ヒヨコに向き直ると、 「アンタが探してるものはこっちよ」 先にたって部屋を出た。 「ヨシ!ソコマデ案内セヨ!」 ヒヨコは短筒を構えたまま油断なく辺りを睥睨して、見かけよりも機敏な動きで慧さまの後を追った。 「大丈夫でしょうか・・・」 彗を抱きしめたまま、二人が消えたドアを見つめる斎。 「慧さまのことだ、ぬかりはないさ。それより・・・」 左之助は、ソファでゴロニャンしている二人を睨み、 「こっちの方がよっぽど問題だな・・・」 と呟いた。 |
「・・・んで、なにがどうしたのか、説明してくれる?」
ここはヒヨコ神社の応接にあたる部屋。 一人がけのソファにふんぞり返っているのは慧さまだ。 テーブルを挟んでその前に座っているのは、「美剣士(但し軽い)」と評判のサータルスだが、幼児を抱いている上、恐縮して縮こまっているため、小柄なはずの慧さまがやけに大きく見える。 ノッカーを連打する音で、夢の世界から現実へと引き戻された慧さまは、頗る期限が悪かった。 パジャマの上にフリースを羽織って、ジト目で腕組みしている姿からは怒りのオーラがめらめらと沸き立っている。 「あ、うん・・・そうだな・・・・」 勢いに押されるようにサータルスはぽりぽりと頬をかきながら話し始めた。 ☆ 「流れ星を見たのは、エクサリアから至急の呼び出しがあったので、ファンブルグに戻る途中でな・・・」 サータルスがいきさつを語る。 「あ、それとな、あれ、流れるスピードが遅かったから流星というよりは彗星かもしれんぞ」 「彗星?」 「ああ、尾をひいていたしな。詳しくは星観(ほしみ)の榊にでも聴いてみればいい」 「ふ~ん」 「で、しばらく歩いていたら、茂みの中に光る物を見つけたんだよ。茂みの中に入っていくと、大きな岩が割れていて、光っていたのはその岩の内部だった。まぶしくて目を細めて近づいたら、岩の横に、この子が倒れていたんだ」 「ほう」 「最初は事故に巻き込まれたのかと思って顔を近づけてみたんだが、ちゃんと息をしていたんで安心したよ。それから周りを見た。親が倒れてるんじゃないかと思ってな」 「親はいたの?」 「いや、周りには誰もいなかった。そこで、不思議に思ったんだ。この子はいったいどこから来たんだろう。こんな夜遅くに、ひとりでこんなところをウロウロしているなんてありえないだろう?」 「捨てられたんじゃないの?そういう話聞くよ?」 「そうかもしれない。でもそういう感じじゃなかったなぁ。慧さまは信じられないかもしれないけど、光る岩に入って宇宙から飛来したって言う方が納得できた」 「まあ、その辺はアンタの勘が正しいかもね」 「そうしてるうちにこの子が目を覚ましたんだ」 「ふむ」 「で、私を見て怖がるどころか、ニコっと笑って、『パパ・・・』と言ったんだ」 サータルスは腕の中で寝ている子に目をやった。 「名前は?どこから来た?両親は?何を聞いても笑って『パパ』というだけだった」 「ふんふん」 「この子をこんな場所に放置していくわけにはいかないし、食事もさせなければいけないだろう?いろいろ調べるのは後にして、ひとまずファンブルグに戻ってきたわけだ」 「そして、城のビアガーデンでエクサリアとハイデッカーを交えた修羅場を演じたわけね」 「相当凄かったそうですね、なんか噂になってるようですよ、ねっ、左之助さん?」 エクサリアを寝かしつけてきた斎(いつき)は、邪気のない笑みを浮かべている。 「・・・ああ、覚悟しておくといい」 ハイデッカーを担いで宿屋にぶちこんできた左之助は真面目な顔で頷いた。 サータルスは深くため息をついた。 |
星の光は生きとし生けるもの-全ての生命-の上にあまねく降り注ぐ。
草原を駆けるものたちの頭上にも。 ようやく芽吹き始めたつぼみの上にも。 ★ 「あっ、星が流れたにゃ!」 くろねこ5のリーダー、アインは前方を指差した。 「・・・」 無言で星の流れた方向をみつめるツヴァイ。 「知ってるにゃ?人間たちは流れ星にお祈りをすると願い事が叶うって信じてるらしいにょ」 エヘンと胸を張るドライ。 「そういえばゆかりこも、よくよぞらをみあげていたにゃ・・・」 しんみりとフィーア。 「・・・ねこたちもおねがいかなうかにゃ」 末っ子のフュンフが不安げに呟くと、 「よ~し、それじゃみんにゃでお祈りにゃっ」 アインの掛け声で5匹はいっせいにお祈りを始める。 「・・・」 「・・・」 「・・・」 「・・・」 「・・・」 ひとしきり祈ったあと、お互いに顔を見合わせてエヘヘと笑いあう。 「みんにゃ何をお祈りした?ねこはきろにゃと・・・てへへ」 「願」 「もちろんこのセカイの独裁者になることにゃッ!」 「ゆかりことまた会いたいにゃぁ・・・」 「えーとね、おえかきがじょうずににゃりたい・・・」 五匹はまたお互いの顔を見合わせるとにゃははと笑った。 「・・・叶うといいにゃぁ」 アインは再び夜空を見上げた。 ★ ハウト密林地帯にも流れ星にまつわる伝承がある。 「流れ星を一緒に見た恋人同士は、次に流れ星を見るまで離れる事ができない」 大昔、戦の前になると離れ離れになりたくない恋人たちが、ずっと一緒に夜空を見上げていたらしい。流れ星が降るのを待ちながら・・・。 古代の遺跡からも流れ星と恋人たちをモチーフにした壁画が数多く発見されているので、古くから伝わる伝承なのだろう。 もちろんファンブルグの星祭りのことは、ここ、シルトでも話題になっていた。 歩哨中の若い二人の間でも、勢い話題は流れ星にまつわる話になる。 「でも・・・こんな狭い夜空からも流れ星は見えたのでしょうか?」 みいは首をかしげた。 生い茂る熱帯林の隙間から見る夜空は小さい。 ファンブルグで暮らした一年間、みいは空の大きさに驚きそして感動した。 だって、高い樹の上や山に登らなくてもこんなにも空が大きく見えるんだもの・・・。 「見えるよッ、ほらッ!」 隣を歩くキラが指差す方角を見上げると、狭い夜空を切り裂くように星がひとつ流れ落ちた。 キラはみいの幼馴染で、今は一緒にハウト密林管理官を勤めている。 「ああ、本当ですね。こんな小さな空でも見えるんだ・・・」 みいは感慨深げに呟いた。 「うふふふ・・・」 キラはなんだかとても嬉しそうだ。 「どうしたんですか?なんだかとても嬉しそうだけど?」 「うんっ!だって・・・」 キラの顔がにへらっと崩れた。 『恋人同士が流星を一緒に見ると、次の流星まで離れられない』んだよ?」 「!」 みいの顔は一瞬で真っ赤になった。 ボンっと音が聞こえたような気がしたのは空耳ではないかもしれない。 「な、なにを言ってるですかッ!キラはッ!!」 意識を取り戻したみいは先を歩く幼馴染の背中をポカポカと叩く。 「にゃはは~」 樹々の合間から差し込む月明かりが二人を照らしていた。 |
「来週の日曜日の夜、ファーレンの上空で100年に一度の大流星群が観測できるであろう」
王立天文台の唐突な発表に街中が驚き、そして沸き立った。 その日は奇しくもファンブルグ城下町で四半期ごとに開催されるフェスティバルの日・・・。 「今回のフェスティバルは星祭りだ!」 東地区の商人たちを中心に、ファンブルグの城下町は星祭にいまだかつてないほど盛り上がっていた。 ☆★★ 街中に流れ星をかたどった装飾があふれている。 看板や飾り物はもちろんだが、街を行き交う人々の服や装備の至る所に星、星、星。 アクセサリーも、星型のものが人気を集めている。 そんな日の落ちた東地区を歩く3つの影。 「本当にどこもかしこも星だらけねぇ」 商店の軒先に飾られた流星の吹き流しを指で弾いたのは、知る人ぞ知るヒヨコ神社のリーダー慧さま。 三つ編みを左右に垂らした風貌はローティーンにしか見えないが、身の軽さと器用さを極限まで高めたシーフである。 残念ながらその器用さは日常生活には活かされていないようだが・・・。 「あっ、お姉さま、ピカピカ光ってきれいですよ」 その横をキョロキョロ眺めながらピョコピョコついてくるのが、クレリックの斎(いつき)。 そのほわほわした印象からは想像し難いが、回復呪文と攻撃呪文の遣い手だ。 「はいはい、・・・それにしても盛大に電気の無駄遣いじゃないの、これっ・・・」 斎の指差す方向の電飾を眺めて呟く慧さまに、 「・・・まあ、そういうな、慧さま。人が星を敬うのは古来から世界各地に伝わる風習のようだ。特に昔は流れ星は凶兆でもあったともいう。多少派手なくらいでいいではないか」 後ろからついてきていた長身の男が諌めた。 腰には大刀を差し懐手で歩いている左之助は剣士というよりは侍と呼ぶのがふさわしい風貌だ。 腰に差した刀以外でも、槍、斧、小太刀なんでもござれの近接戦のプロフェッショナルだ。 「あっ、あそこに星形をしたキャンディが~」 斎がスイーツを満載したワゴンに駆け寄っていった。斎を護るボディガードのように左之助も後に従う。 「まぁ、平和でいいんだけどね」 慧さまはそんな二人を見て笑みを浮かべた。 その時、夜空をツーッと流れ星がひとつ横切った。 灯りが煌々と輝く街中でもはっきりとそれとわかる相当な明るさを持った星だった。 「あっ、流れ星だっ!」 空を見上げた人々から歓声が上がる。それと同時に、 「色白、髪黒、髪長ッ!」 「金星(かねぼし)、金星、金星・・・」 空を見上げ早口で願いを唱える声があちらこちらから聞こえてくる。 「流星が降るたび生命が生まれる・・・」 「えっ?」 怪訝な顔で振り返る慧さま。 しかし、そこには誰の姿もなかった。 (流れ星は凶兆であった・・・) 左之助の言葉が引っかかる。 「んーー、面倒なことが起こんなきゃいいけどね・・・」 慧さまは夜空を見つめて呟いた。 |